若手が辞める本当の理由!建設業界の悪しき習慣と定着させる具体策

若手が辞める本当の理由!建設業界の悪しき習慣と定着させる具体策

  • fukush
  • 2025年12月4日
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「手塩にかけて育てた若手が、数年で辞めてしまう」
建設業界の経営者や人事担当者の方々から、このような嘆きの声が絶えません。

深刻な人手不足と高齢化が進む中、未来を担う若手人材の確保と定着は、業界全体の最重要課題です。
しかし、多くの企業が採用に苦戦し、たとえ採用できても早期離職に頭を悩ませているのが現実ではないでしょうか。

この記事では、なぜ若手が建設業界を去ってしまうのか、その「本当の理由」を深く掘り下げます。
長時間労働や給与といった表面的な問題だけでなく、業界に根強く残る「悪しき習慣」や、若者世代との「認識のギャップ」にこそ、問題の本質が隠されています。

本記事を通じて、若手離職の根本原因を理解し、彼らが「この会社で働き続けたい」と思える環境を構築するための具体的な打ち手を見つけていただければ幸いです。

コンテンツ

データで見る建設業界の若手離職の現状

まず、客観的なデータから建設業界の若手離職のリアルな姿を把握しましょう。
「建設業は離職率が高い」というイメージが先行しがちですが、実態は少し異なります。

全産業と比較した離職率の実態

厚生労働省の「令和4年雇用動向調査結果の概況」によると、2022年の建設業の離職率は10.5%でした。
これは、産業全体の離職率15.0%と比較すると、むしろ低い水準です。

このデータだけを見ると、「建設業の離職率は高くない」と安心してしまうかもしれません。
しかし、問題の核心は別の場所にあります。

深刻なのは「新規学卒者」の早期離職

本当に深刻なのは、新規学卒者の3年以内離職率の高さです。
厚生労働省のデータによると、新規高卒就職者の就職後3年以内の離職率は、建設業が43.2%(2021年3月卒)に達しており、全産業平均の36.9%を大きく上回っています。

新規高卒就職者の3年以内離職率(2021年3月卒)

  • 建設業: 43.2%
  • 全産業平均: 36.9%

つまり、業界全体で見れば離職率は平均以下でも、未来を担うはずの若者たちが、キャリアの初期段階で業界を去っているという厳しい現実があるのです。
この「若手の流出」こそが、技術継承を困難にし、業界の高齢化をさらに加速させる最大の要因となっています。

若手が口にしない「本当の退職理由」- 7つの悪しき習慣

では、なぜこれほど多くの若者が早期に離職してしまうのでしょうか。
彼らが退職届に書く「一身上の都合」の裏には、業界特有の構造的な問題や、時代にそぐわない悪しき習慣が隠されています。

理由1:長時間労働と休日の少なさ – プライベートとの乖離

建設業界の長時間労働は、依然として深刻な課題です。
厚生労働省の調査では、建設業の労働時間は全産業と比較して年間330時間以上も長いという実情があります。

年間総実労働時間の比較(2023年平均)

  • 建設業: 1987時間
  • 調査産業計: 1657時間

出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和5年分結果速報」

また、休日日数も他産業に比べて少ない傾向にあります。
一般的な業種の年間休日が120日前後であるのに対し、建設業の平均は105日前後というデータもあります。
ワークライフバランスを重視する現代の若者にとって、プライベートを犠牲にする働き方は受け入れがたく、離職の大きな引き金となっています。

理由2:旧態依然とした人間関係とコミュニケーション不足

建設現場は、元請け、下請け、協力会社など多くの関係者が関わる複雑な環境です。
その中で、昔ながらの体育会系の気質や、上意下達のコミュニケーションが根強く残っている現場も少なくありません。

「お前」呼ばわりされる、理不尽なことで叱責される、わからないことを聞ける雰囲気がない、といった経験は、若手の精神を疲弊させます。
特に、年齢の近い先輩が少ない職場では孤立感を深めやすく、悩みを相談できずに一人で抱え込んでしまうケースも多いのです。

理由3:不透明な評価制度とキャリアパスへの不安

「このままこの会社にいて、自分は成長できるのだろうか?」
「今の頑張りは、正当に評価され、将来の給与や役職に反映されるのだろうか?」

多くの若手社員が、このような将来への漠然とした不安を抱えています。
評価基準が曖昧であったり、数年後のキャリアパスが見えなかったりすると、仕事へのモチベーションを維持することは困難です。
特に、日々の業務に追われる中で、自身の成長を実感できない環境は、将来性のある他業界への転職を考えるきっかけとなります。

理由4:「見て覚えろ」式の非効率な人材育成

建設業界では、今もなお「仕事は現場で見て覚えろ」というOJT(On-the-Job Training)頼みの育成が主流の企業が少なくありません。
しかし、体系的な研修制度がないまま現場に放り出されても、若手は何をどう学べば良いのかわからず、戸惑うばかりです。

指導者側も、自身の業務で手一杯で、丁寧に教える時間的・精神的余裕がないのが実情です。
結果として、若手は放置され、成長を実感できずに自信を失い、早期離職につながってしまいます。
ベテランの持つ高度な技術やノウハウが、次の世代に継承されないという問題も深刻化しています。

理由5:給与体系への不満 – 労働対価のアンバランス

建設業界の給与は、他産業と比較して決して低いわけではありません。
特に近年は、人材不足を背景に初任給を引き上げる企業も増えています。

しかし、問題はその内訳と昇給カーブにあります。
長時間労働や休日出勤に対する手当が適正に支払われていなかったり、基本給が低く設定されていたりすると、若手は「労働に見合っていない」と感じます。
また、初任給は高くても、その後の昇給率が低ければ、長期的なキャリアを築く魅力は薄れてしまいます。

理由6:いまだ根強い「3K」のイメージと現実のギャップ

「きつい、汚い、危険」という、いわゆる「3K」のイメージは、建設業界に長年つきまとってきました。
近年は、技術革新や安全対策の強化により労働環境は大きく改善されていますが、就職前のイメージと入社後の現実とのギャップに苦しむ若手もいます。

特に、夏場の酷暑や冬場の極寒といった過酷な自然環境での作業や、肉体的な負担の大きさは、想像以上かもしれません。
このギャップを埋めるための事前の情報提供や、入社後のケアが不足していると、早期離職につながりやすくなります。

理由7:DX化の遅れによる非効率な業務

他産業では当たり前になっているデジタルツールの活用が、建設業界ではまだ十分に進んでいません。
いまだに紙ベースの書類作成や、電話・FAXでの連絡が主流の現場も多く、非効率な業務が若手の負担を増やしています。

スマートフォンやクラウドサービスを使いこなすデジタルネイティブ世代にとって、このようなアナログな働き方は大きなストレスです。
最新技術を活用してスマートに働きたいという希望が満たされず、業界の将来性に疑問を感じてしまうのです。

企業と若手の認識ギャップが離職を加速させる

さらに問題を複雑にしているのが、若手が辞める理由について、企業側と若手本人との間に大きな「認識のギャップ」が存在することです。

国土交通省の調査によると、企業側が考える若手の離職理由と、若手自身が考える離職理由には、以下のような違いが見られます。

順位企業側が考える離職理由若手(離職者)が考える離職理由
1位作業が身体的にきつい雇用が不安定である
2位(若者の)職業意識が低い遠方の作業場が多い
3位現場での人間関係が難しい休みがとりづらい
4位労働に対して賃金が低い労働に対して賃金が低い
5位休みが取りづらい作業に危険がともなう

出典:国土交通省「建設業の働き方として目指していくべき方向性(参考資料)」、厚生労働省「建設労働者を取り巻く状況について」のデータを基に作成

この表からわかるように、企業側は「きつい」「本人の意識が低い」といった、個人の資質や肉体的負担に原因を求めがちです。
一方、若手は「雇用の安定性」「休日の確保」「勤務地」といった、労働条件や将来の生活設計に関わる点を重視しています。

この認識のギャップがある限り、企業が良かれと思って打つ対策は的外れなものとなり、離職の連鎖を止めることはできません。
若手の本音に耳を傾け、彼らが本当に求めているものは何かを理解することから始める必要があります。

若手人材を定着させるための具体的な8つの打ち手

若手離職の根本原因を理解した上で、彼らが定着し、活躍できる魅力的な企業になるためには、どのような手を打つべきでしょうか。
ここでは、明日からでも始められる具体的な8つの施策を提案します。

1. 「新3K」の実現:給与・休暇・希望の提供

従来の「3K」のイメージを払拭し、国土交通省が推進する「新3K」を実現することが不可欠です。

  • 給与(Good salary): 労働に見合った適切な給与体系を整備し、昇給モデルを明確にする。
  • 休暇(Good holiday): 週休2日制を徹底し、有給休暇を取得しやすい文化を醸成する。
  • 希望(Good hope): キャリアパスを明示し、若手が将来に希望を持てる環境を作る。

これらを実現することで、建設業は若者にとって魅力的な選択肢となり得ます。

2. 働き方改革の断行:2024年問題への本質的な対応

2024年4月から建設業にも適用された時間外労働の上限規制は、働き方を見直す絶好の機会です。
単に労働時間を削減するだけでなく、業務の棚卸しを行い、無駄な作業を徹底的に排除する必要があります。
適正な工期設定や、ITツールの活用による業務効率化を進め、長時間労働に依存しない体制を構築することが急務です。

3. 建設DXの推進による生産性向上と魅力向上

ドローンによる測量、BIM/CIMの活用、クラウドでの情報共有など、建設DX(デジタルトランスフォーメーション)は、生産性を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。
DXは、業務効率化だけでなく、若手にとって「スマートでかっこいい」という業界イメージを醸成する効果もあります。
中小企業でも導入しやすいクラウドツールやアプリから、スモールスタートで始めることが可能です。

4. 体系的な教育・研修制度の構築

「見て覚えろ」の文化から脱却し、計画的・体系的な教育プログラムを導入しましょう。

  • 新入社員研修: 社会人としての基礎から、業界の専門知識までを網羅的に教育。
  • OJTの仕組み化: 指導担当者を決め、育成計画に基づいて指導。指導者向けの研修も実施。
  • 資格取得支援: 資格取得にかかる費用補助や、合格時の報奨金制度などを設け、スキルアップを奨励。

5. キャリアパスの明示と公正な評価制度の導入

若手が安心してキャリアを築けるよう、将来の道筋を具体的に示しましょう。

例:

  • 1〜3年目: 現場担当者として基礎を学ぶ
  • 4〜6年目: 小規模現場の責任者を経験
  • 7年目以降: 施工管理技士の資格を取得し、大規模プロジェクトを担当

また、何をすれば評価されるのかを明確にした公正な人事評価制度を導入し、頑張りが報われる仕組みを作ることが、社員のエンゲージメントを高めます。

6. メンター制度導入とコミュニケーションの活性化

年齢の近い先輩社員が「メンター」として新入社員を公私にわたってサポートするメンター制度は、若手の孤立を防ぎ、早期離職の防止に非常に効果的です。
定期的な1on1ミーティングの実施や、社内イベントの開催などを通じて、部署や役職を超えたコミュニケーションを活性化させ、風通しの良い職場環境を作りましょう。

7. 建設キャリアアップシステム(CCUS)の活用

国土交通省が推進する「建設キャリアアップシステム(CCUS)」は、技能者一人ひとりの就業履歴や資格を登録・蓄積できる仕組みです。
これを活用することで、技能や経験が客観的に評価され、適切な処遇につながります。
若手にとっては、自身のキャリアが可視化されることで、将来への見通しが立てやすくなるというメリットがあります。

8. 企業ブランディングによるイメージ刷新

自社のウェブサイトやSNS、採用イベントなどを通じて、働きやすい環境や若手が活躍している姿を積極的に発信しましょう。
「新3K」の実現に向けた取り組みや、DXの導入事例などを具体的に示すことで、旧来の「3K」イメージを払拭し、先進的で魅力的な企業であることをアピールできます。

こうした採用ブランディングは、若手人材の獲得競争が激化する現代において不可欠な戦略です。
例えば、建設業界に特化したデジタルマーケティング支援を行うブラニューのような専門企業のサポートを活用し、効果的な採用ブランディング戦略を実践するブラニューのサービスを参考にしながら、自社の魅力を的確に伝えることで、採用のミスマッチを防ぎ、定着率の向上にも繋がります。

【先進事例】若手定着に成功している企業の取り組み

実際に、働き方改革やDX推進によって若手の定着に成功している企業も増えています。

事例1:ITツール活用で残業60%削減と週休2日を実現した企業

ある建設会社では、クラウド型の勤怠管理システムや、現場写真・進捗を管理する専用タブレットを導入。
これにより、事務作業が大幅に効率化され、現場でおおむね週休2日を実現。
さらに、ノー残業デーを設けるなどの取り組みにより、残業時間を約60%も削減することに成功しました。

事例2:スモールDXで魅力的な職場環境を構築した地域建設会社

千葉県のある建設会社では、クラウドベースのコミュニケーションツールを活用し、電話や移動、手戻りといった無駄を削減。
大規模な投資ではなく、身近なツールからDXを始める「スモールDX」を推進することで、業務効率化と魅力的な職場環境の構築を両立させています。

まとめ:若手の定着は、企業の未来への投資である

建設業界における若手の早期離職は、個人の問題ではなく、業界全体が抱える構造的な課題の表れです。
長時間労働や旧態依然とした人間関係といった「悪しき習慣」を断ち切り、若者の価値観に寄り添った働き方を実現しなければ、企業の未来はありません。

本記事で紹介した「新3K」の実現、建設DXの推進、体系的な人材育成といった具体的な打ち手は、一朝一夕に実現できるものではないかもしれません。
しかし、これらは単なるコストではなく、企業の持続的な成長を支える「未来への投資」です。

若手が希望を持って働き続けられる環境を整えること。
それこそが、深刻な人手不足を乗り越え、変化の時代を勝ち抜くための唯一の道筋なのです。

最終更新日 2025年12月17日 by fukush